vol.9

■出向いて得る本からの情報
「学問研究は足でやるものです。どんなにささいなことでも納得がゆくまで足を使って小まめに調べるのです」と筆者の黒川鍾信氏(明治大学教授)は、その恩師から常々言われてきたそうです。恩師の先生は、いつも古書店で資料を探しまわっていたということなので、恐らく資料を探す手間を惜しむなという意味で言っていたのでしょう。でも、この黒川教授は本当に自分の足で世界中を歩き回り、現場に行くことで多くの事を確認して、多くの業績を残してこられました。この記事で気になったのは、やはり恩師の先生の一言ですね。
私もインターネットで手軽に情報が見つかるからといって、それを鵜呑みにしてしまい、きちんと本で調べる機会が減っています。でも、インターネットで見つけたことが本当に正しいのかどうかはわかりません。「そんなのわかっているさ」と思っていても、思わぬ落とし穴があるものです。つい先日、「10桁で終了 円周率ついに割り切れる」という新聞記事をネットで見つけてしまい、非常にショックを受けたのですが、これは「虚構新聞」という新聞のパロディを掲載したサイトでした。やはり、信頼できる情報を確実に得るためには、手間を惜しまず本で裏付けを確認する作業が本当に大事なんですね。
え?どうやって本で確認したら良いかわからないですって?そんなことを言われると、またまた紹介しちゃいますよ?図書館2階カウンターにいる図書館マンさんに聞けばバッチリです(と本人が言ってました)から、ドンドン聞いてみましょう! 
(図書 680号/「学問研究は足でやるものです」)


■地域住民が選ぶ本
地域の人がお薦めの本をピックアップし、その推薦文を書く。街のみんなから集めた推薦文を載せた小冊子をつくって、書店がそれを配りながら、そこに掲載されている本を販売する。そんなちょっと変わったブックフェアが、東京都文京区千駄木の小さな街の本屋さんで開催されました。
 このフェアでは、新刊発売時にはあまり知られていなかったような本も、地域の人々によって沢山セレクトされて、それが想像以上に売れたのだそうです。
 フェアの期間中、ホームページで日々の売れ行きを公開したところ、「もっと私の選んだ本に注目してっ!」とばかりに、選者からさらに力の入った推薦文が届いたり、他の人がセレクトした本の紹介を熱心にする人が現れたりしたそうです。ネット上で地域の人々が活発に参加している様子を、実はこの記事を読む前から私も密かに注目していました。どうしても気になったので、千駄木に行ってみましたが、会場の往来堂書店は本当に普通の街の、個人経営の小さな書店でした。特に流行りのお洒落な雰囲気って訳でもない、ごくごく普通のお店です。
 amazonbk1みたいなオンライン書店では、読んだ人が感想を書いて推薦するような形が随分前から行われていますが、これを顔が見えるご近所さんを巻き込んで、局地的にやったというアイディアは素晴らしいと思います。
 この企画で往来堂と繋がった人たちは、同じ本を買うんだったら、どうせなら往来堂で買おう、みたいな気持ちにきっとなるんでしょうね。
(未来 No.四七一/「地域密着のひとつの形」)


■温泉でライブ!
温泉で芝居ではない、プールでライブでもない、“温泉でロック”なのだ。
 DJ用のターンテーブルもあり、湿気でスクラッチできるのか、などと余計な事も考えたが、屋外の温泉なので、からっとしていて問題ないのかもしれない。バイキングの衣装のバンドや、水着でノッているカッコいい観客などの写真も掲載されている。そんな夢のような(そう思うのは自分だけか?)場所がアイスランドにある、という記事を見つけた。
 これ以上の詳しいことは、「relax」本誌をぜひ開いてみてほしい。“世界の温泉”から、“浴衣の似合う日本の温泉”まで、習慣の違いと定番をきちんと紹介していて面白い。
 そして気をつけてほしいのは、この雑誌「relax」が1階フロアに置いてあることだ。1階だからといって全て、児童書と女性誌だけではないのである。
 1階も見逃せない。
(relax十一巻一号 通巻一〇七号/温泉ハッピーデイズ!)



国立博物館、九州に誕生!
博物館が開館しました。その名も、九州国立博物館。この、通称「九博」は、「日本文化の形成を、アジア史的観点から捉える」という独自のコンセプトに基づき展示を行ない、また、太宰府天満宮のとなりの森のなかに建立されるという立地環境から、注目を集めています。開館後四日間で三万八千人の入場者を記録するなど新たな九州のニュースポットとして存在感もたっぷりです。
 特別展や収蔵展なども意欲的に取り組んでいるようで、(詳しい情報は九博のホームページからも知ることができますよ)ますます期待が膨らみますね。是非、九州に行ったら足を運んでみたいものです。広い会場と最新設備の九博の概要を知るには、まずこの記事をどうぞ。
芸術新潮 56巻12号/大宰府の森とアジアの森 九州国立博物館オープン)

 
■どうなっていくの〜?
自転車ツーキニストとして有名な疋田智氏の連載から、今回は宇都宮と足尾の紹介記事です。
 大谷石の採掘現場跡につくられた大谷資料館は、案外地元の人も行かない場所だけに、なかなか興味深い内容でした。日本最古の石仏が大谷にあったなんて、知ってました?最近ではコンサートや美術展の会場によく使われているようですが、その昔、薬師丸ひろ子主演の「セーラー服と機関銃(八一年)」のロケにもこの地下坑道が使われたなんて、知らなかったですよね?
 それから足尾町。こちらには銅の精錬所跡やかつての迎賓館跡など、往時を偲ばせる建築がまだまだ沢山残っているようです。北海道の夕張は、炭鉱が閉鎖した後、メロンで街が活性化したようですが、足尾はどうなっていくのでしょう?その方向性を、地元の人たちが今まさに考えているところだそうです。
 鉱山跡を活かした観光地になっていくのでしょうか?ターゲットは若者?それとも中高年?ひょっとして、テーマパークが出来たりして?これからの足尾、ちょっと気になる存在ですね。
(BICYCLE CLUB 21巻249号 通巻262号/「日本史の旅は、自転車に限る!」)


■恐るべし町工場、ここにあり
世界一有名な町工場の経営者、岡野雅行氏の紹介記事。
 人と同じことがイヤだという強烈な個性の持ち主で、難しくて誰にも出来ない仕事じゃなきゃ引き受けない。他の会社にできる仕事なら、そっちに頼んでくれといって仕事を断ってしまう。そんな職人気質の町工場のオヤジさんが、卓越した技術と発想で、今や国内大手企業やアメリカ国防総省にまで頼りにされている。この人の作った電池ケースのお陰で、携帯電話が劇的に小さくなったというのは、何度もテレビで紹介されているし、今や世界中に知られている有名な話。
モノづくりをするメーカーが、困った時に頼りにやってくるこの岡野工業という会社は、年商六億円になった今も社員六名の町工場で、代表の岡野氏自身も今でも日々機械に向かって作業をしているという。たとえ頼りになる後継者がいたところで、職人だから自分で手を動かしてモノをつくっていなきゃ気が済まないのだそうだ。こんな岡野氏だからこそ、ひとつの製品の成功に満足せず、次々と難しい新規開発に挑戦しつづけて、今日の評価を得ているのだろう。ヒット商品を守って利益を上げる経営の対極と言っていい。
この記事は、モノづくりの腕一本で生きていくというのはこういうことだ、という強烈なメッセージであり、組織に埋没して無力感を感じている人への大いなる戒めとも受け取れそうだ。
(日経ベンチャー253号/「FACE ザ・経営者」)


■衣装デザイナー、ワダエミ
 映画『HERO』、『LOVERS』での、画面を彩る衣装の美しさにドキっとした人は多いのではないだろうか。登場人物を飾る衣装が、どれほど映画作品に影響を及ぼしているのだろうかと、そんなことを考えてしまうぐらい、素敵だった。
 上記の映画の衣装を手がけたのは、日本が誇る世界的衣装デザイナー、ワダエミ。先日、テレビ番組で特集を組まれていたから、彼女が和田勉の奥様ということもご存知の方もいるだろう。彼女は、日本に「衣装デザイナー」という概念がまだなく、貸衣装がほとんどだった映画・映像・舞台世界に革命を起こし、その地位を確立した。イメージ通りの衣装がなければ、創る。染める。全て、その作品のためだけに、膨大な資料を読んで衣装を作り出し、文字通り作品に色を添えるのだ。
 映画『乱』(85年・黒沢明監督)で、アカデミー賞最優秀コスチュームデザイン賞を受賞し、その後、活躍を海外に広げ、現在は、中国で撮影している韓国映画の製作に取り掛かっているという。そんな忙しい合間をぬって、現在、展覧会「ワダエミの衣装世界」が東京で開催中だ。この展覧会についても、自身が「空前絶後」と話す大がかりなイベントだ。全て、手縫いの衣装で、映画の撮影で使われた本物が展示されているそうで、刀で刺された痕や、血糊の痕もそのまま。しかし、それらをマネキンに着せると息を吹き返したように蘇ってくるのが不思議だと話すワダ氏。「他人任せで準備した衣装展ではなく、全て隅々まで監修した」と話すほど納得のいく出来栄えなのであろう。今月25日までなので、興味のある方はお早めにどうぞ。 
 ★ ワダエミが衣装を担当したTBSテレビ50周年 2006年新春スペシャルドラマ『里見八犬伝』が、2006年1月2〜3日に放映されるそうで、こちらもチェック!
CHAI no.42 /華麗なるワダエミの衣装)


■コツコツと続けること
 ケータイ小説の第一人者・内藤みか氏、女性向け自己啓発書の元祖・中山庸子氏、株関連書でブレイク中の山本有花氏。三人に共通することはもちろん、女性執筆者ということ。プロの書き手となるための執筆方法、テーマの見つけ方、執筆を続けていくノウハウを語った対談記事。そのなかでも、「夢を実現する方法」について、いくつも執筆している中山氏の発言には大いに納得した。─「何でもいいから毎日書くことを習慣化することが大切。」─これは、執筆業だけでなく、何事もコツコツ積み重ねることが実を結ぶという実践例ではないだろうか。「作家になりたいという気持ちをあきらめないで書き続けることが大切だと思う」と続け、対談は終了するが、まさにやりたいことをコツコツ実行し、夢を叶えたご本人の言葉の威力は違う!
(編集会議 通巻七八号/「私たちは、こうしてプロ作家としてデビューした」)



 ■携帯電話の活用
 携帯電話からインターネットを利用する人は、今年の9月末現在で約4800万人。そこまで普及した携帯からのインターネットアクセスに対して、サイトを公開する企業側は、ビジネスに役立てるために、具体的にどんな効果を狙って、実際にどのように活用しているのでしょう?そんな調査結果を紹介したのがこの記事です。
 ところで、ちょっと耳寄りな情報。携帯の機種によって、使えないサイトがありますよね。ゆうき図書館の本の検索なんかも、一部キャリアの端末からは利用できないようです。システム業界の方によると、新しい端末を発売するたびに仕様が変わってしまい、ウェブサイト側ではとても全機種になんて対応できないという、困ったキャリアがあるそうです。どのキャリアがそうなのかは・・・ここでは伏せておきましょう。ともかく試してみればわかります。
(ITセレクト2.0  6巻1号 通巻56号/「企業の携帯電話向けウェブ活用の実態」)



■頭痛持ちさん、 朗報です。
 慢性的な頭痛に悩んでいる人はいませんか?頭の片側が強く痛むことはありますか?働き盛りの30代に多いこの症状。もしかして、「片頭痛」かも。でも、病院行くほどじゃないから、薬で痛みを抑えてしまっている人が多いかもしれません。
 実は、片頭痛には、特効薬があるそうです。でも、頭痛専門医でないと、二日酔いなどの頭痛と区別が難しく、正しく診断されないことが多いとか。この状況を改善すべく、鳥取大学などの研究グループを中心とする頭痛医療推進委員会が約一年かけて、「片頭痛簡易質問票」を作り出したというこの記事。過去三ヶ月以内の頭痛に対し、質問の2項目以上が“ときどき”もしくは“半分以上”なら陽性、つまり片頭痛の可能性が高いそうで、この自己評価した質問票を持参して受診すると効果的とのこと。
 気になる方は、是非「R25」を読んでみて! 
(R25 NO.71/その痛み、「片頭痛」じゃないですか?)


■あなたは、ほぼ日手帳を知っていますか?
「なんでもない日を大切にする」というコンセプトでつくられた手帳、「ほぼ日手帳」。楽しくて使いやすい手帳をつくろうと、二〇〇三年から毎年、コピーライターの糸井重里氏が手がけてる大ベストセラーの手帳です。彼の運営する「ほぼ日刊イトイ新聞」というインターネットのサイト上でアンケートを行なって、その意見を反映して毎年販売されています。二〇〇六年の手帳をつくる時のアンケートには、五千人以上から意見が寄せられたのだとか。
 この記事は、先月発売された「ほぼ日手帳の秘密」という本の書評です。(図書館にはまだ入ってませんねぇ。どうやら発注中らしいです。)十万冊のベストセラーになったほぼ日手帳の制作ドキュメントを綴った本なのですが、その本を担当した編集者が自ら書いた書評です。
 う〜ん。このセレクトはちょっと捻りすぎですかね・・・。実は、ザッパーで「ほぼ日手帳」に触れてみたかったからこの記事を取り上げてみたんです。この記事を読んで、「ほぼ日手帳の秘密」を読んで、ついでに「ほぼ日刊イトイ新聞」を見ると、この手帳が本当に欲しくてたまらなくなりますよ?
(ポンツーン 八巻十二号 通巻八七号/「担当編集者のここを読んで欲しい!」)


両毛線が主役!!
 今回、恵比寿・代官山・中目黒を特集している、「散歩の達人」。
 えっ?田舎人には無縁だって?イエイエ、実は、その他の目玉記事「今月のおすすめ沿線散歩」では、今回JR両毛線がクローズアップされていますよ!ずばり、小山から桐生までの沿線上の食べ物屋、おすすめスポット、あるいはその土地独特の行事などを紹介しているので要チェックです。
 個人的に気になったのは、山前(小山から五一分)の「悪口まつり」。まず、名前に驚きですよね。なんでも、最勝寺(大岩毘沙門天)で大晦日の晩から元旦未明まで行なわれる奇祭だそうで、すばり、参道で行きかう人に「ばかやろう」と大声で悪口をかけあうのだそう。(なんともアグレッシブなお祭りだ・・・。)「貧乏」「泥棒」など「ぼう」が付く言葉はNGだというから、「ばかやろう」の他に「ぼう」が付かない言葉なら、何でもいいのだろうか?この日ばかりは、無礼講で普段なかなか言えないあの人にもどさくさにまぎれて言っちゃったりして。
 悪口で一年の憂さ晴らしをして、スッキリした気分で新年を迎えられるといいですよね。この他にも、沿線上の情報満載です。普段乗らないという方も、たまには両毛線の旅を満喫してみてはいかがでしょう。
散歩の達人 10巻12号通巻117号/今月のおすすめ沿線散歩)