vol.8

■地名の歴史、ご存知ですか?
 さくら市大空町みどり市。一体どこのことだかわかりますか?これはみんな市町村の平成大合併で誕生した地名です。地元の意見もあったのでしょうが、あまりに一般的過ぎるネーミングで、全く個性が感じられませんよね。つくばみらい市。どうして平仮名にする必要があったのでしょう?どうも、イメージばかり気にして、土地の歴史をバッサリ切り捨てるようなやり方には好感が持てません。
 近所では、駅と学校を除くと下館という地名が消えちゃいましたよね?
 下館という地名の歴史は600年とか1000年とか、ともかくすごく伝統のある名前だったのに、公式の地名リストには、もう下館の名は存在しません。こんなことが、いま全国で一斉に起きています。これはもう、ただ寂しいというだけでは済みません。地名という歴史的な遺産が失われているという事実は軽くはないはずです。
 地名政策に警鐘を鳴らすこの記事では、他にも日本中の失笑を買った南セントレア市をはじめ、多数の事例と問題を紹介しています。地名と歴史とは、いろいろと密接な関係があるんです。これを読んで、土地の名前の由来を調べてみるのも面白いかも?
そんな調べものに役立つ本も、ちゃんと図書館にありました。この機会に、良かったらあなたも調べてみませんか?
 本が見つからなければザッパーvol.3(2005/9/15発行)でもご紹介した「図書館マン」に聞いてみましょう。きっと親切に教えてくれる筈です。
(月刊本の窓 28巻10号通巻251号/「平成大合併で創作される地名、姿を消す地名」)


■のれんは我が家のシンボル。町の遊び。
 岡山県真庭市勝山。ここに、「ひのき草木染色工房」がある。この工房で染色をしている加納容子さんは、東京の短大で染色を学び、十年ほど前から地元でのれん作りをしている。実家の酒屋の入口にかけたのれんがきっかけとなり、加納さんののれんは一躍人気になった。「うちにも染めてくれんじゃろうか」と頼まれ、少しずつのれんが町に増えていくうちに、家や店ごとののれんが通りにずらっと並んだら面白いのではと思ったのだそう。やがて、のれんによる町おこしが始まった。
 現在、街角で揺れるのれんは八十枚を超える。すっかり町の個性として定着し、観光客からも親しまれるようになった。「かつて出雲街道の交通の要として栄えた町並みは白壁の土蔵、レトロな看板、立派な細工が施された酒蔵、連子格子の商家などカメラに収めたくなるほどだ」という。住民は、のれんにカメラを向ける観光客にも、気軽に「いいよ!いいよ!」と応じてくれたり、「勝山のれんMAP」というものも渡してくれる。これは、オリエンテーリング気分で地図を頼りに町中を歩きまわれるもので、なんとも気さくでおしゃれな心意気を感じさせられる。
 「トックリが模様だから、酒屋さん?あっ、クリーニング店だから、洗濯の渦の模様か!」など、のれんの模様で何の商売をしているところか当てたくなってしまう。一枚ののれんが町おこしとなり、住民が楽しんで参加している。しかも、訪れる観光客までも楽しませてくれる町なんて、とっても素敵ですね。
(月刊染色α通巻二六九号 /まちかどにひるがえる個性 のれんのまち 岡山県勝山)


■地球に優しい服を着る
 環境に優しい商品作りで定評のあるアウトドアブランド「パタゴニア」。今までにも、綿製品には無農薬でつくるコットンしか使わないとか、ペットボトルからフリースをつくるとか、様々な形で地球環境との共存を訴える独創的な商店展開をしてきました。そのパタゴニアがついに、使用済みの自社製品をリサイクルして再び製品をつくるという、完全循環型リサイクルを実現したというニュースです。同社の「キャプリーン」という服を、廃棄しないでお店に持って行けば、それを新しい繊維として再生し、再び同じ製品を作るとのこと。これって、ちょっと凄くないですか?
 着るものだから、もちろん値段やデザインも気になります。でも、こんな姿勢でつくられた服を着るのって、何となく気持ちが良いんですよね。
(BE−PAL 25巻12号通巻294号/「パタゴニアが今いいたいこと」)


■正しい立ち読み
 立ち読みをしたことがあるかと聞かれて「ある」と答える人がほとんどだと思う。私は「本屋の店主」や「書店員」になった経験はないので、立ち読みをされる側の心情は分からない。かといって、堂々と丸一冊を立ち読みで読了してしまうほどの根性?は持ちあわせてはいない。だから、ちょっと気になってしまったこの記事。
 まず、女性書店員が語る立ち読みマナー違反の悪態の数々には驚かされた。シリーズ全巻読了しちゃう人、トイレに本を持っていく人、コピーしちゃう人、お弁当食べながら読む人・・・すっすごすぎる。「立ち読みをするなとは言わない。せめてマナーは守ってほしい」と嘆く書店員さん。そんな現実、ちょっと気の毒です。 他の人への迷惑と本にダメージを与えるようなことは絶対やっちゃダメ!という鉄則の下、「立ち読み十二か条」を誌面で作成。本屋さんは、「情報を売る」商売なんだから、せめて全巻読了とか買わないのに私物同様の扱いとかはやめましょう。
本の雑誌 通巻二七〇号/立ち読みの研究 )


■困ったときはタイムマシンに乗ってみる?
 臨床実践にもとづいた具体的な記述を旨とする雑誌、「こころの科学」。最新の心理学の現場を知るには良い一冊です。ここで毎号連載中の「タイムマシン心理療法」では黒沢幸子先生(臨床心理学)がカウンセリング場面の事例を紹介しています。
 「タイムマシン心理療法」。そのタイトルに「?」と疑問を持ったり、興味を持つ人もいると思います。これは、現実生活において悩みや不安を抱える相談者に対して、「タイムマシンに乗って、未来のあなたが、今のあなたを見に来たとしたら、どんな言葉をかけてくれるだろう?」とカウンセラーが働きかける心理療法です。相談者自身が、現在を通り超えて、未来に生きている自分の視座から現在の自分をとらえることで、自身が持っている力で問題を解決することを意味しています。これは、日常生活においても、簡単にできそうな問題解決法ではないでしょうか。例えば、何らかの不安や悩みを抱えている時、それを十年後の自分自身に聞いてもらう。そこで十年後(その問題を解決できていて、今より楽しい生活を送れている)の自分は何と言ってくれるかを考えます。おそらく、自分自身が一番の理解者であり、解決者でもあることに気づかされるのではないでしょうか。
(こころの科学 通巻一二二号/タイムマシン心理療法)